夜を行く
相変わらず友人達が言うところの夜の徘徊老人をしている。
月に1~2度は夜に出掛けたいと言う衝動にかられるのだ。
海老名ICから圏央道。
トンネル好きだわぁ。むか~しテレビでやってたタイムトンネルを想い出す。模様は全然違うけどね。屋根開けて走ると会話が出来ないくらい五月蠅いけど・・・。
八王子ジャンクションから中央道へ。そして大月ジャンクションで河口湖方面、リニア実験線の鉄橋の下を潜って河口湖ICへ。
途中、車が繋がっている。横を抜いていくと先頭には赤灯を点けたクラウンが走っている。制限速度の80キロで走っているようだったが、その横を90キロで抜いていく。すると、何台かは私の後に続いた。みんなビビッていたのかな、10キロオーバーくらいじゃ捉まえないって。(笑)
そして電飾のチラつく富士急ハイランドを見ながら国道139号線。
どこに行こうか。そうだ!。30年以上行ってない本栖湖へ行ってみよう。
23時、交通量は疎ら。コンビニの配達トラックが前を走るだけ。
鳴沢村に入って「本栖湖」の看板を見間違えて右折する。樹海青木ヶ原の中を走る林道を走る。街灯なし、前後に車無し。試しにライトを消すと当たり前だが真っ暗だ。
しばらく行くと右手に湖。あれ?これは西湖じゃない?と言うことで周りを一周して再び139号線に戻る。
樹海の中をひたすら走る。何か居ないか目をこらす。白い人影とか、時速100キロで走る老婆とか出ないかなあ。
車はやがて本栖湖の入り口に到着。139号線から右に折れると「もとすみち」と言う道路に入る。取りあえず湖の周りを周回してみることにする。
私以外に車は走っていない。しばらく走ると右手の草村に何か見えたような。
うーん。車を止めてしばらく様子をうかがうも何もいない。
さらに進む。
あっ。
なんか居る。
車内から慌てて撮ったのでブレブレだが、鹿だ。肉眼で見ると20頭ほどの群れ。
車を止めて見ているとそのうちの一頭がこちらに向かって疾走してくる。おい、車にぶつかるなよと思っていると直前で方向転換。窓の横を悠々と通り過ぎる。慌ててシャッターを切ったがガラスに反射した光だけだった。
その後、湖畔を走らせているといくつかの群れに遭遇。写真を撮ろうとしたが、構える前に道路脇の斜面に消えていく。やたら鹿がいる。
そう言えば、かなり昔だが。西湖の湖畔で天然記念物のカモシカに遭遇したことがある。
時計を見ると深夜1時を回っている。そろそろ帰るか。
139号線を戻ることに。
途中、観光名所の鳴沢風穴がある。
「かざあな」ではない。「ふうけつ」と読む。他にも氷穴と言うのもある。
風穴は樹海の中にある。深夜、道路沿いの広い駐車場には私の車が一台だけ。
静寂が辺りを包み込んでいる。
丁度用を足したくなったので公衆トイレに向かう。
樹海に入ってから胃とお腹の具合が急に悪くなっていたので個室に入ることにした。
トイレ自体は照明も明るくて清潔だ。
男子トイレ、奥に3つあるドアを全て開けたがどれも和式で、一つは道具入れ。
しかたなくしゃがむ。そう言えば、和式なんていつ頃使っただろうか。
聞こえるのは水が流れるような音だけ。他には何も聞こえない。
これで上を見上げたら黒髪を垂らした女が見下ろしている・・・とか。
なんにもなかった。
駐車場の背後は樹海に続く木々で覆われている。
何枚か写真を撮ったが光源が弱いせいかまっ暗にしか写らない。
しばらくタバコをくゆらしながら暗い森を眺めていた。
なんとなくだが、向こうから見られているような感覚に襲われた。
霊感なんてぜんぜん無いんだが、それが一人や二人ではないような感じがした。
気持ち悪いので退散することにする。
息が真っ白になる。車内に戻ってエンジンをかけると表示された外気温は氷点下。
特に変わったことはなかったのだが、本栖湖の湖畔を走って居る時に左手から暗い自転車の灯火のようなものが出てきたのをバックミラーで捉えた。
右は湖、左は森だ。たまにキャンプ場やコテージみたいなものがあるからその住人かゲストのものかと思ったのだが、こんな時間に寒い中を自転車でどこへいくのだろうと思いながら車を走らせた。
チラとバックミラーを見ると相変わらず小さな暗いライトが見える。
あれ・・・。
私は時速40キロ弱で走っているのに自転車との距離が大して開いていない。
早くね?
カーブが続く湖畔の路はずっとミラーを見続ける訳にもいかない。
何度かめにミラーを見た時にその光は消えていた。
競輪選手が深夜の本栖湖で練習していたとは思えないけど・・・。
その後は定番の御殿場へ抜けて東名高速で帰途についた。
凍結注意の看板が目立った。そろそろ箱根の夜は止めた方が良いかも知れない。








