夢の中の少女
滅多に夢なんて見ないんですけど、と言うか見ても覚えていないのかも知れないけど。
今回は珍しく覚えてました。
場所はこんな感じ。
そうです。学校の教室。
夢と言うか回想シーンかな。
まあ、私は昔から絵を描いてたんですが、中学時代のとある日の放課後、黒板に何かのイベント用に依頼された絵を描いていたんです。
画像よりもう少し日が傾いてたかな。秋だったような気がします。
だいぶ描き上がって一息入れようと振り返るとIさんと言う女子生徒が自分の席に座って絵を見ていました。
教室には私とIさんの二人だけです。
「昔から絵だけは上手よね」
Iさんがぽつりと言いました。
「どうも」
口下手な私の返事。
こんな短い夢。
実はこのIさん、小学校の頃にも何度が同じクラスになったことのある女性でした。初恋の人と言う訳ではありませんが、当時は一方的ですが好意を持っていたような気がします。
小学校時代、一人っ子で気の弱かった私はややいじめられっ子でした。
そんな時代を知っているIさんは中学に入って行動的になった私の変化をずっと見ていたと言わんばかりの表情で私を見ています。
今で言うところツンデレと言う奴でしょうか。デレかどうかは知りませんが、私の知る限り彼女が笑っているところを見たことがありません。
綺麗な顔立ちなんですが、なんとなく陰のある少女と言う感じでした。なにかと屯すことの多い女子中学生ではありますが、いつも一人で誰とも話すことはありませんでした。
頭の良い子だったと記憶しています。
6年生の夏休みに箱根で林間学校がありました。寝る時間になると大広間に沢山の布団が敷かれて雑魚寝です。男子と女子は一応別々の部屋なんですが、襖を取っ払ってるからあまり意味がありませんでした。
私は名前巡で言うと男子で一番最後、Iさんは女子で1番最初。結果的に男女の境目で布団を並べて寝る状態になりました。
隣に好きな子がいるんですからドキドキですよね。(^^)
そんな私にIさんはきつい一言。
「私、あんたのこと嫌いだから」
俺が君に何をしたんだよ~。(;;)
素直な私はそれ以来、彼女になるべく近寄らないようにしていました。
そして中3の秋、夕方の誰もいない教室で二人っきりのシチュエーション。Iさんは嫌いなはずの私に声を掛けてきたのです。
別に女性の前では上がってしまって話せないと言う私ではありませんでしたが、このIさんともう一人の女性だけにはどうしても口が開けないのでした。もう一人は内緒。
今考えるとIさんは話すきっかけを作ってくれたのではないかと思っています。
「昔から絵は上手だよね」
と言う言葉は・・・昔からずっと見てるよと言う意味ではないでしょうか。
「どうも」の一言で会話に終止符を打ってしまった私。
もし、あの時に会話を膨らませていたら二人の距離はグッと近づいていたかも知れません。小6のトラウマが私の口を重くしていたのでしょう。
昔のIさんの言葉を額面通りに受け取って避けていた私なんですが、乙女心の複雑さを理解出来なかった私が愚かだったのか、それとも彼女の単なる気まぐれだったのか。
でも、同性にも殆ど話しかけない彼女が私に声を掛けたことにはきっと意味があったんだろうなと思うのです。
後年、Iさんはやや不良っぽい同級生と結婚したと噂を耳にしました。それはとても意外でした。
40年以上経って突然夢に現れたIさんですが、何でしょう虫の知らせなんでしょうか。
「私、あんたのこと嫌いだから」と言う当時の言葉、気の弱い私に浴びせられた痛烈な批判だったのでしょうか。